帝王切開について
何らかの理由で自然分娩ではなく、帝王切開になる場合があります。自分は自然分娩するものだと思っていて、帝王切開のことは何も知らないけれど、急に帝王切開したらとんでもなく大変だった、なんてことになるかもしれません。
帝王切開について事前に知っておくために解説します。
帝王切開とは
自然分娩(経膣分娩)では母体または赤ちゃんに危険が伴う時、子宮切開によって赤ちゃんを取り出します。その手術方法を帝王切開といいます。
帝王切開の種類
予定帝王切開
前回の出産が帝王切開、逆子、多胎妊娠、巨大児、前置胎盤、子宮筋腫等合併症がある場合など、あらかじめ日時を決めて帝王切開することとなります。 陣痛が来る前手術する必要があるため、手術日を 38 週前後に設定します。
緊急帝王切開
経腟分娩を予定していたものの、お産の進行中に赤ちゃんが低酸素状態になってしまったり、身体が途中で引っかかってしまった場合、子宮口が十分開かない場合等何らかの理由で経腟分娩が不可能と判断され、急いで行う手術です。
帝王切開の麻酔
予定帝王切開では硬膜外麻酔または脊椎麻酔で行われます。 膝を抱えて背中を外側に突き出す様な体勢で注射されるので、けっこうきついそうです。 腰から下の半身が麻痺するので、ママの意識はあります。赤ちゃんの産声を聞いて、顔を間近に見ることができます。赤ちゃんへの麻酔の影響はほとんどありません。
緊急帝王切開では全身麻酔で行われる場合が多いです。ママの意識はなく、赤ちゃんも少し眠そうだったり、呼吸が弱めで産まれます。胎盤を通して赤ちゃんへも麻酔の影響は少しですが出ます。
切開方法の種類
ヨコ型
回復後の傷跡が下着のラインに沿うため、目立ちにくいという利点があります。通常はヨコ型で切開されます。
タテ型
傷跡は目立ちやすいのですが、皮膚の線維に沿って切るため治りが早いという利点があります。 帝王切開と併せて追加で手術をする場合などはタテ型に切ることもあります。
予定帝王切開の流れ
- 前日に入院
- 前日の晩から絶食
- 家族に待機をしてもらって、いざ手術
- 麻酔、尿道留置カテーテル挿入、弾性ストッキング着用
- 帝王切開術開始
- 出産
- お腹の縫合
- 手術終了
- 術後当日はベッド上安静、食事不可のため点滴
- 術後翌日、食事・歩行開始、尿道留置カテーテル抜去、赤ちゃんと面会
- 手術から8日目に退院
術後の痛み
手術中は麻酔が効いているため痛みはほとんど感じません。術後麻酔が切れた後が一番痛くて、数日間は動いたりするとお腹が痛みます。痛み止めの処方がされるのでしっかり内服しましょう。それでも痛みが強い場合は助産師や医師に相談しましょう。
母乳は出る?与えられる?
帝王切開だと母乳が出ないというのは間違っています。
胎盤が体外へ排出することでオキシトシンというホルモンの分泌が始まり、母乳が出るようになります。
麻酔・鎮痛薬の影響や、経膣分娩よりも出血が多くなりやすいことで、初回の母乳での授乳が遅くなりやすいため、母乳が出始めるのが通常よりゆっくりの場合があります。(母乳は乳房外へ出せば出すほど作られる)
初乳(産後5日間くらいまでは出る、粘り気のある黄色の乳汁)は赤ちゃんへ与えた方が良いとされている(蛋白質が多く、細菌やウイルスから守ってくれる免疫抗体などが多く含まれているため)、術後いつから母乳を与えられるのか、あらかじめ助産師や医師に確認しておきましょう。
傷口の抜糸はする?傷跡は残る?
子宮の縫合は溶ける糸(吸収糸)で行われます。お腹の縫合も吸収糸、もしくはステープラ(医療用ホッチキス)で行われます。
昔は、退院前に抜糸を行っていましたが、昨今は吸収糸を使うため、抜糸はほとんどありません。ただし、ステープラーの針は退院前に外します。
帝王切開による傷跡は1年後には目立たなることが多いです。傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになる可能性もあるので、心配な方はあらかじめ傷跡を残りにくくするテープやシートを処方してもらうようにしましょう。 術後1年が過ぎてケロイドになってしまった場合でも治癒できるので、かかりつけの産婦人科、または形成外科や皮膚科に相談してみても良いでしょう。
まとめ
人によっては「帝王切開は陣痛がなく、楽な出産」という偏見がまだあり、 経腟分娩で出産できなかったことをコンプレックスに感じてしてしまうママもいます。
しかし、帝王切開も経腟分娩も、どちらも立派なお産で、命がけで赤ちゃんを産んだことに違いはありません。出産したら自分を褒めてあげましょう。コンプレックスに感じる必要は全くありません。ご家族は、出産の方法にかかわらず、まずは「お疲れさま」「頑張ったね」「ありがとう」といったねぎらいの言葉をかけて下さい。